2010年09月28日

著作権とパチンコ屋の釘

 ウチダ先生のブログのバックナンバーを読んでいて気になるところがあった。

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原理的に言えば、「無償で読む読者」が増えれば増えるほど、「有償で読む読者」予備軍は増えるだろう。
だから、ネット上で無償で読める読者が一気に増えることがどうして「著作権者の不利」にみなされるのか、私にはその理路が見えないのである。

(内田樹の研究室 2009年1月7日 http://blog.tatsuru.com/2009/01/

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 ふむ。

 えとー。
 私なりに考えてみました。

 それは、「出版業界が、斜陽産業である」ということにも、原因の一端があると思います。

 私は、出版業界の「あらゆる意味でのルーズっぷり」にかなり腹を立てている反面、「あらゆる意味でルーズ」なところが、出版業界のパワーの源でもあり、魅力でもあると思っています。

 だから、『ノストラダムスの大予言』みたいな、「冷静に考えれば明らかにウソでしょうでもおもしろいからいいや」という、世界の終末すらオモチャにしてしまうような本が出版されて大ベストセラーになっちゃうわけで。
 ぜーんぶの本がNHK出版から出ましたみたいな、ごりんごりんの堅い本になったら、出版業界なんておもしろくもなんともない。
 ホントかウソかわからん怪しい本があるから、おもしろいんである。
 (だから、「カラサワの本はウソだらけ」とお怒りの方々には、「あなたがたはそもそもカラサワさんの本が全部ホントだと信じていたのですか!」と驚いてしまうのです)

 ウソはいけないジャンルの本(辞書とか法令集とか)はあるけれど、怪しい本だってあるほうがおもしろいじゃないですか。ネット記事や2ちゃんねるのおもしろさはそこにあるんだし(もちろん、ネット記事や2ちゃんねるが「全部ウソ」だと言っているのではありません。それはそれでおもしろくないよね)
 生物の多様性みたいなもんで、いろ〜んな本があるから、出版業界はおもしろいんである。
 (話がそれるけど、今、書籍の生態系がすげーいびつになってる。これは良くないと思う)

 で。
 なんの話だったっけ?
 あ、そうそう、著作権の話でしたね。

 著作権が最近やかましく言われるようになったのは、権利意識の高まりとかそーゆーのもあると思うけれど、出版業界が貧乏になってきたというのも大いに関係していると思います。

 私は著作権に関するウチダ先生の意見には基本的に賛成しています。
 だって、フツー考えて、「お客さんがいっぱいいるところには自然とお金が集まる」もんね。
 課金システムばっかりしっかりしていてもお金なんか集まらない。

 だけど、不思議というかなんというか、いかなる業種でも、貧乏になってくると、「人を集める」ことよりも、「ひとりも漏らさない課金システムを考える」ほうに傾くよね。

 たとえばパチンコ。
 客足が悪くなったら、釘を開けて玉を出してお客さんを集めた方がいいに決まっています。
 しかし、だいたいのパチンコ屋は客足が悪くなると、お客さんからお金をもっともらおうとして(客単価を上げようとして)、釘を締めて出ないようにする。

 これは単なる私の印象ですが、以前某パチンコ雑誌の編集者さんに聞いたところ、同じ意見が返ってきました。
 釘をひらいていっぱい出るようにするパチンコ屋さんはますます儲かり、しめるパチンコ屋さんはますますお客さんがいなくなる。


 そういうわけで、出版業界が斜陽だからこそ、いろんなところでタダで読めるようにして、「ほーら、こんなにおもしろい本が出版業界にはあるんだぞう」と広報したほうがいいと思います。
 だけど、今、ますます出版業界は「1人も課金漏れがないように」という方向に進んでいる。

 うーむ。
 こりゃ、出版社が電子出版に本格参入するのはますます遅くなりそうだね〜。
 何回も「1人も課金漏れがないように」ということで過去に失敗しているのに。

 それにひきかえ、個人の皆さんは「どんどん読んで〜」と無料の電子出版を出している。
 こりゃあ、読者数としては勝てませんわな。

 
 で。
 じゃー、どうやって私たちがこの出版不況を生き残っていけばいいのかと言うと〜(ウチダ先生には『街場のメディア論
』で「生き延びられるものは生き延びよ」と言われちゃったしさ)。

 それは1つしかないよね。
 「プロでしか作れない、ものすごくおもしろいコンテンツをつくる」

 あたりまえじゃんと言われたらそうなんだけれどさ。

 で、で。次が問題。
 「どーやって、この本が『ものすごくおもしろいコンテンツですよ』と大勢の人に教えるのか」というとですね。
 
 やっぱり、無料で一部あるいは全部を公開しちゃうというのが手っ取り早いですよね。
 ネット時代だから、お金もかからないしさ。

 「お金をもらうために、無料で公開する」というのは一見矛盾に思えるけれど、「人が集まるところにはお金も集まる」というのはわかるよね?

 とにかくおもしろいコンテンツをつくって、ギャラリーを集めること。
 本来メディアっていうものは、そういうものだったんじゃないかな、と思います。


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posted by バーバラ・アスカ at 09:46 | TrackBack(0) | 出版評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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